とあるEEIC学生の備忘録 (4S,院試編)

はじめに

院試が終わったので忘れないうちに4Sの振り返りを書くことにしました。 EEIC学生や東京大学 大学院 情報理工学系研究科 電子情報学を目指す人の役に立つかも?

4月

上旬は研振りで決定した研究室で顔合わせや手続きを行う時期で、下旬はミーティングや勉強会などに参加して研究室の雰囲気に慣れる時期。 自分は特に研究したい内容も無かったので方針を立てるために先輩の研究内容や有名な論文などを読んだりしていた。
卒業するためには4Sのうちに科目番号にEE4がついている授業を最低でも4単位分履修する必要があるのだけれど悲しいことに情報系は授業の選択肢が少ない。 具体的には「プログラミング言語」、「通信網工学」、「情報セキュリティ」、「VLSIアーキテクチャ」あたりしかないので情報系学生はこれらの中から選ぶことになります。 4AにはEE4の授業が無いため、4SでEE4の単位の確保に失敗するとかなりヤバいです。履修登録には冗長性を持たせましょう。 特に「プログラミング言語」は期末レポートがかなり重めなので要注意。
4月の間は特にやることも多くないのである程度自由に行動できます。授業を真面目に聞くも良し、研究テーマについて考えるも良し、TOEFL対策や院試対策をするも良し、ゲームするも良し。

5月

研究テーマを決め始める頃、かつ院試について考え始める頃。 情報理工の出願には研究計画書の提出が必要なので5月中にある程度研究の方向性を決めることになります。「研究テーマなんて思いつくわけないよ~」と思うB4生も多いと思いますが、教授陣もその点は理解していて迷えるB4には研究テーマの提案を授けてくれるのであまり心配しなくても大丈夫のはず。(研究室によるかも)
また情報理工の出願にはTOEFLの成績が必要なので6月までにTOEFLを受けなければなりません。以前は大学でTOEFL itpが受けられたようなのですが、今はコロナ禍の影響でTOEFL ibtを自費で1受ける必要があります。TOEFL ibtはreading,listeningに加えてwritingとspeakingもあるので受験英語しかしてこなかった人は要対策です。(とは言ったものの120点満点で50点でも合格できるらしいので英弱でもなんとかなります。)

6月

院試の出願が終わり、各々の研究テーマで頑張る時期。
真面目な人はこの時期あたりから院試の対策を始めてたりする。自分は遊んでました。不真面目なので。

7月

院試ムードが漂い始める時期。
教授陣も鬼ではないので院試期間中はミーティングの欠席を許してくれることが多いので、しっかりと勉強に集中しましょう。研究室によっては勉強会があったりするけど基本的には孤独な闘いが続く。この時期は基本的に数学対策をしておけばOKだけど、数学と専門の試験は2週間程度しかないので専門の対策も少しずつ始めておきたいところ。(今までのEEICの授業を真面目に受けてきた人であれば専門対策は2週間でも十分ではあるけど)

8月

院試真っ只中。 8月上旬には数学、下旬には専門の試験及び口述試験、面接が待ち構えている。
twitter上で「数学・専門で成績が悪かった人は口述試験で『就職活動とかしてる?』と聞かれる」とかいう出所不明の噂があったけど流石にそれはないはず…(口述試験の前に数学・専門試験の通過者が発表されるため) 口述試験と面接では大したことは聞かれないけど研究テーマや志望動機などは普通に聞かれるので最低限の対策はしておきましょう。(おそらくこの二つの試験の真の目的は他大学院の筆記の日程と被せて併願防止するというところにあると思われる。)

9月上旬に合格発表があるのでこれで晴れて院試は終了。 10月あたりから成績開示申請ができるようになるらしい。

院試について

院試を受けるにあたって役立ちそうな情報を以下にまとめておきました。 2022年度時点の情報なのであくまで参考までに。

出願等

重要なものをピックアップするとTOEFLスコア・研究計画書・推薦書の提出が必須。 研究計画書は昨年度に、推薦書は今年度から追加された影響か合格倍率が数年前と比較して低くなっているので院試を通過するだけならそこまで難しくなさそう。ただ希望する研究室に配属されるかは成績に左右されそうなのでちゃんと勉強はしましょう。 現地でもオンラインでも受験が出来るようになっているけれど現地で受けている人が多い印象。おそらくオンラインで受験する場合手続きが増えたり三脚が必要になったりと面倒なのが原因。

数学

ここ10年間では大問1が線形代数、大問2が解析、大問3が確率・統計で構成されている。 大問3は高校レベルの確率の問題が頻出だけど、稀に確率分布の問題が出るので要対策。

現地でもオンラインでも受験可能になった影響か、今まで3問で2時間半だったのが今年は1問50分を3回行う形式に変更されている。難しい問題を捨ててその分の時間を簡単な問題につぎ込むということが出来なくなったので注意。(この形式は今年度だけかもしれないけど)

ちなみに2021年度は数学がなかったらしい。過去問に2021年度分の数学試験がないのはそのため。

専門

近年の傾向では大問1が電気電子回路、大問2はデジタル回路・アーキテクチャ、大問3がアルゴリズム、大問4がネットワーク、大問5が情報理論・信号処理で構成されていて、この中から3問解くようになっている。過去問とは傾向を変えてくることがあるので、過去問だけじゃなく対応する授業について復習しておいた方が良さそう。以下は各教科の感触。
ちなみに自分の中では各範囲の難易度は
(易)信号処理<情報理論<電気電子回路<アーキテクチャ=アルゴリズム<ネットワーク(難)
だった。

電気電子回路

対応する授業は電気回路第一(2A)
回路、微分方程式ラプラス変換オペアンプが頻出。 全体的に計算量が多く、近年では傾向を変えてフェーザーに関する問題が出たりと油断できない。

デジタル回路

対応する授業はディジタル回路(2A)
状態遷移図・状態遷移表・カルノー図を作成して最終的に回路図を作成するという形式が頻出。 状態遷移図が正しく書ければそこまで苦労はしないはず。

アーキテクチャ

対応する授業はコンピュータアーキテクチャ(2A)
パイプライン処理、キャッシュ、仮想記憶が頻出。 他の範囲に比べて覚える量が多く難解なことが多い。

アルゴリズム

対応する授業はアルゴリズム(3S)
グラフに関する問題が出やすい傾向がある。 正当性の証明が難しいので個人的には苦手意識があった。

ネットワーク

対応する授業は(おそらく)ネットワーク工学概論(3S)、情報通信工学(3A)
範囲が結構広く、EEIC過去問の解答もあまりないので対策するのは難しい。

情報理論

対応する授業は情報通信理論(2A)
エントロピー、ハフマン符号が頻出。 logの近似計算があるため細かい計算が面倒。

信号処理

対応する授業は信号解析基礎(2A)、信号処理工学(3S)
フーリエ変換Z変換が頻出。 問題は基本的なものが多く複雑な問題はあまり出てこなかった印象。

おわりに

院試が終わったら中間報告が待ち構えているためEEICB4に夏休みはありません
頑張りましょう。


  1. 一回の受験で2万円近くかかる。これに加えてTOEFL対策の本も何冊か購入したので総額で3万位かかった。

とあるEEIC学生の備忘録 (2A-3A編)

はじめに

3Aの授業がすべて終わって暇になったので今までのEEIC生活(2Aから3Aまで)の振り返りを書くことにしました。EEICに興味がある方やEEICに所属するB2B3の方の役に立てば幸いです。(授業のオンライン化などもあってシステムも大きく変わることも考えられるのであくまで参考までに。)

適当に自己紹介

UTS2 → EEIC2020(電情)
中高時代では友人の勧めもあって競プロを少しだけやってたけど、前期教養ではほとんど情報系の内容に触れていなかった。(「情報」と「アルゴリズム入門」くらい?)
2Aと3Sの間にある春休みに急に競プロ熱が出てきたので割と真面目に勉強して緑コーダーになるも、途中で面倒くさくなってその後はノータッチ。
進振りでEEICを選択したのは情報系に進みたかったのと所属する生徒が多いから就職に強そうとかそんな理由だった気がする。

2A

EEICに進んだ自分が最初に直面したのが週20コマの授業 1
「いや、多すぎでしょ」って突っ込みたくなるけど、実験は一コマもなくて座学が中心だから疲労はそこまでたまらないし、過去の先輩達が残してくださったskprとkkmnが豊富にあるため意外と何とかなります。一回も出たことがない授業でも単位取れたし。 あと女装する先生や壁に対して激突を試みる先生がいたり、じゃんけん大会2が開催されたりと話のネタには尽きなかったなあと思います。

電気系の授業と情報系の授業が半々くらいなので既にどちらに進むか決まっている人にとっては退屈に感じるかもしれないけど、逆にまだ進路が決まっていない人にとっては幅広く内容を学んだ上で自分の進路を吟味できる絶好の機会だと思いますね。(自分はどちらかというと前者の方だったけど…)

2A2になるとソフトウェアⅡが始まるのだけれどこれが結構重い。配布されたスライドを参考にプログラムを完成させて提出するという内容だけど課題が授業内で終わらないことの方が多い。友人と一緒に授業を抜け出して情報教育棟で課題に取り組んでいたのも今となってはいい思い出。重い分プログラミングの理解(特にポインタと構造体)は深まるので真面目に取り組む価値はアリ。

実は2Aが最も多く単位を取得しやすいため研振りにおいて重要な時期だったりするから勉強はある程度真面目に取り組んでおきましょう。(3年は実験が始まるため単位を稼ぐのが難しい。)

この頃は現地授業だったから人と会話する機会が多くて楽しかったなあ…😭

3S

今年度からオンライン授業が開幕。情報系の教授がいたのもあってか特に問題もなく3授業は進んでいたと思います。個人的にオンライン化して嬉しかったのは通学時間が消えて1限に出席しやすくなったこととお布団の中でぬくぬくしながら授業を受けられるようになったことですね。

重要なこととして3Sからは前期実験が始まります。
前期実験には電気系のP課題、回路系のA課題、情報系のI課題、エネルギー系のE課題があり、それぞれ2-4週間で1課題を終わらせるペースでこなしていきます(スケジュールは全員共通)。実験のオンライン化にともないほとんどの実験(I課題以外)がシミュレーションをするだけになってしまったけれども、それでも急なオンライン化に対応できる教授陣凄いと感動した覚えがあります。情報系志望者の自分としてはこの中でもネットワーク通信や信号処理を用いたインターネット電話の作成をするI課題が一番面白かったです。
あと前期実験は大学側が指定した班で取り組むことになるので地味にコミュ力が要求されたりします。頑張りましょう👊4

実験はそれなりに大変ではあるものの、その分講義が減るため3S全体で考えるとそんな忙しくなったようには感じられなかったかなという印象。3年生はEEIC生活の中でも暇を作りやすい方だと思うのでいろいろなことに挑戦するのもいいかもしれません。自分は特に何もしなかったけど
また授業が情報系と電気系から選べるようになるので時間割の満足度が2Aよりも高くなる傾向があります。

3Sの終わりくらいに履修コースの選択があります。電情の人はA1,A2,AS、電電の人はB1,B2,BSから一つコースを選択することになるのですが、限定選択科目が少し変化する程度で研究室にそこまでかかわってくるわけではないので気軽に選んでもいいと思います。(限定選択が大きく足りない人は真面目に考えた方がいいかもしれません)

3A

後期実験開幕。
夏休みの間にあらかじめ30個近くある実験の中から希望する実験を15個ほど選択し、個人の希望が最大限通るように3~6個程度の実験が割り当てられます。つまり人によって参加する実験もスケジュールも異なるわけです。 実験には5日間のものと10日間のものがあり、基本的に電気系の実験は5日間、情報系の実験は10日間になっていて、合計30日間の実験をこなす必要があります。5

個人が希望した実験に配属されるだけあってガチ勢の巣窟になっていることも多々あります。自分のような一般人は振り落とされないように頑張ってしがみつきましょう。 あと班を組んで行動する実験もあるため優秀な人と組むと学べることも多そうです。コミュ力が重要なのは言うまでもありませんね

またこの時期から研振りについて考える必要があります。研振りで用いられる基準は2Aから3Aまで平均点6で不可や未受験は含まれないらしい。どの研究室が人気になるかはその年その年で結構違うみたいなので、行きたい研究室を志望する同期が少ないことを祈りましょう。ちなみに情報系は激戦区になりがちです😭。

研究室選択には第一段階と第二段階があります。
第一段階では生徒全員が希望研究室を1つ選択して研究室の配属枠数が足りていればそのまま配属、配属枠数より希望者が多ければ成績順で決定します。一応大学側で仮調査があったり、生徒間でも事前調査をしたりするので第一段階で決着をつけようと思えばつけられるはずです。
第二段階は第一段階で配属されなかった生徒が希望研究室を10個選択して各研究室に配属される人数と希望する人数の兼ね合いを大学側が調整して決定されます。おそらくこの段階でもある程度成績が考慮されるはずです。
誰がどのくらいの成績でどの研究室を希望しているか、自分がどの程度の成績をとれているのかはほとんどわからない7ため運ゲー心理戦、情報戦になります。

ちなみに研究室を決める手がかりとして以下のことを参考にしましょう。
・研究室見学(基本的に質問タイムが設けられているので教授や学生に質問できる)
・授業の内容(特に3Aの授業はその教授の研究と関連があるものであることが多い)
twitterでの情報(学生の声が聞ける)
・卒論発表会
・第一段階発表後の教授陣による相談会

特に研究室見学では1年間のスケジュール、週何時間くらい研究しているか、教授の指導はどれくらい入るのか、研究テーマは自分で選ぶのかそれとも与えられるのかなど色々聞いておくといいと思います。
配属先が決定するのは3月なので多くのeeic学生は不安を抱えたまま春休みを過ごすことになります。覚悟しましょう。(まあ研振りの辛さは他の学部学科も変わらないと思いますが…)

授業紹介

折角なので個人的に面白かった授業を少し紹介します。情報系が多いです。

ソフトウェアⅠ,Ⅱ(2A)

C言語について基礎から学べる授業。
前述のとおり課題は重いけれどもポインタや構造体についての理解が深まる。

プログラミング基礎演習(2A)

C言語Pythonを基礎から学べる授業。
期末レポートで音声や画像のノイズ除去みたいなことができる。
単位が1.5個分なのが辛い。

アルゴリズム(3S)

Pythonアルゴリズムを学べる授業。
競プロでは出会わないようなアルゴリズムについても勉強できる。

メディアプログラミング入門(3S,理学部)

Pythonでテキスト処理や画像処理などについて学べる授業。
期末レポートではWebスクレイピングと画像処理を用いたプログラムを作成した。
先生が女神。

映像メディア工学(3A)

画像処理について学べる授業。メディアプログラミング入門で学んだことも少し出る。
機械学習ニューラルネットワークについても勉強できる。

オペレーティングシステム(3A)

C言語でマルチスレッドプログラミングなどについて学べる授業。
並列処理と仮想記憶について深く勉強出来る。先生がガチプロ。

データマイニング概論(3A,理学部)

Python機械学習について学べる授業。
実際にプログラムを動かしながら機械学習について学べる。

大規模ソフトウェアを手探る(3A,後期実験)8

その名の通り大規模のソフトウェアを手探る実験。
自分たちの班はPythonの機能拡張をしました。

おわりに

研振りが終わっても院試や卒論が待っていると思うとなかなか苦しいものがありますね。 まあ頑張るしかないんですけど。


  1. 履修コースガイダンスで配布された資料では、電情の生徒は2Aで必修を13単位(8コマ)、必修以外を22単位取得が目安と書かれている。

  2. 「電気電子数学演習」では授業内で発表すると加点されるというシステムがあり、EEICの学生はこの発表する権利を得るためにじゃんけん大会に参加することになる。

  3. ある学部ではZoomに荒らしが乱入して授業崩壊した所が有ったとか。

  4. 会話がない班もそれなりにあったみたいですが…

  5. 「実験期間が合計で30日間になるように」スケジュールが組まれるためあまり希望していなかった実験に割り当てられることもあります。気を付けましょう。

  6. 正確には科目番号にEE2,CO2,EE3,CO3がついている科目の平均点。数年前までは合計点を成績としていたためかなりブラックだったとか…

  7. 3Aの成績の発表が研究室選択の後+自分の点数は優上優良可という区分でしかわからない+ほかの人の点数が全く分からないため

  8. 実験のホームページ https://doss.eidos.ic.i.u-tokyo.ac.jp/